株価と金利の関係とは?日米金利を例に背景を徹底解説

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投資初心者は株価予測が難しい...

なぜ難しいのか?それは、何が原因で株価が変動するかを知らないからです。

株価変動要因として代表的なのが「金利」です。

そのため、株価と金利の関係について不明確な方に向けて分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、株価予測ができる1つの武器を手に入れることができます。

また、日米の金利について把握することで、海外の金融資産への投資についても理解が進みます。

まずは、株価と金利についての基礎について学び、それから日米の金利について実践的な内容を学ぶことで、原理を理解しつつ自分で投資タイミングを図れるようになります!

それでは、解説していきます。

金利と株価は密接に関係している

「金利と株価の関係とは?」と聞かれて即答できる人は少ないのではないでしょうか?

株式投資をしていて...

株価と金利の関係について知らなくてもべつにいいでしょ

こう考えてしまうことは実にもったいない。

なぜなら、金利は株価を変動させる要因として代表的なものだからです。

また、株価と金利の関係について調べたけどうまく理解できないと踏みとどまっている方もいると思います。

まずその悩みを解消するために、金利と株価の関係について分かりやすく解説していきます。

金利が上昇すると株価は下落する

金利には2種類あります。

①短期金利
②長期金利

金利=お金を借りるときの「レンタル料」とイメージすると分かりやすいと思います。

例えば、あなたが銀行からお金を借りるとします。

1年間借りたら、その分の「お礼」としていくらか上乗せして返しますよね?それが金利と呼ばれます。

短期金利と長期金利の各特徴としては、

①短期金利:数か月〜1年未満のお金の貸し借りの金利
例えると、「今日〜来月までのレンタル料」

②長期金利:数年〜10年超のお金の貸し借りの金利
例えると、「5年・10年のレンタル料」

そして株価変動の要因を考えるときは、一般的に長期金利の1つである「10年債利回り」で判断します。

10年債利回りが上昇→株価下落
10年債利回りが下落→株価上昇

このように判断します。

この原理としては、長期金利である10年債利回りが3%から1%に下落した場合、投資家は債券よりも株式を買った方がお得です。

なぜなら、債券利回りが低い場合、債券を保有していても受け取れる金利は少ないからです。

逆に、10年債利回りが1%から3%に上昇した場合は、債券の利回りが上昇しているので、株式よりも債券を買った方がお得となるわけです。

このように考えると、金利と株価は逆に動くことが分かりますね。

これが金利と株価の基本的な関係になります。

金利上昇の影響を受けるのはハイテク株

長期金利が上昇すると、ハイテク株は売られやすくなります!

このような傾向がありますが、どうして売られてしまうのか?

ハイテク株とは、最先端かつ高度な技術(ハイテクノロジー)をもつ企業の株式を意味します。

例えば、IT企業などは日々技術も進化していることから、高い成長性が見込まれています。

ハイテク株とは、グロース株(成長株)と呼ばれることもあります。

このグロース株は、PER(株価収益率)が割高になる傾向があります。

PERとは?

PERとは株価収益率のことで、投資家から見て「その会社がどれくらい評価されているか」を図る指標になります。

このPERの計算方法は以下の通りです。

PER=株価÷1株当たりの純利益

またこのPERを利用して、株式益回りも求めることができます。計算方法は以下の通りです。

益回り=1÷PER

株式益回りとは?

「年間の一株当たり利益が株価の何%を生み出しているか?」を示しています。

つまり、「投資家から評価された株価」と「実際に会社が生み出している利益」と比較して、相応なのか?というイメージです。

益回りが高いほど、投資家へのリターンも高いと判断できます。

PERの値が高い➡投資家から見て割高
PERの値が低い➡投資家から見て割安

日本の国内株式の平均的なPERは、15倍となっています。

この数値を基準にして、割安か割高か判断します。

グロース株の特徴をまとまると以下のようになります。

・PERが平均の15倍よりも高い傾向にある
・益回りが低い傾向にある

金利とハイテク株の関係を以下にまとめます。

金利上昇するとハイテク株は売られる流れ
  • 長期金利が上昇すると、株価は下落する可能性が高くなる。
  • PERの計算式を構成している「株価」が下がることで、PERの値は低くなる。
  • PERが低くなると、益回りが低くなる。
  • 益周りが低くなると、投資家へのリターンが押し下げられる。
  • 結果的に長期金利が上昇するとハイテク株は影響を受け、売られる傾向がある。

 

米国の長期金利の上昇と株価の関係とは?

現在の米国では、長期金利が上昇傾向にあります。

その理由としては、2020年に発生したコロナショックが原因にあります。

新型コロナウイルスの感染拡大ショックで世界経済は大混乱となった時期ですね

米国でも失業者が急増し、株価も暴落したことは今でも覚えています。

ここで、その時の歴史を少し振り返ってみましょう。

このコロナショックへの対応として、FRB(米国の中央銀行)は経済を支えるため、金融緩和という施策を2段階に分けて行いました。

1段階目は、金利の引き下げです。

具体的には、FRBは2020年3月に政策金利をそれまでの金利である1.75%→0%近くに引き下げました。

金利を引き下げることで、企業が資金調達を行いやすくするという目的がありました。

しかし、コロナショックという異常事態には、金利の引き下げだけでは不十分でした。

ここで、2段階目です!

それが、マネー供給量を増やす「量的緩和」という手段でした。

これは、市場にお金を増やすために、FRBは金融機関が保有する国債や住宅ローン担保証券(MBS)を大量購入しました。

FRBが国債やMBSを購入することで、金融機関には大量の資金が流入しました。

その額なんと、2020年3月から4月の2カ月間で2兆ドル(230兆円)となりました。

この①金利引き下げ②量的緩和の2段階の施策により、企業は銀行から大きなお金を借りやすくする環境が整いました。

これにより、企業は資金を低金利で借りることができ、設備投資や人材確保に動けるようになりました。

そうすることで、失業率の低下や売上増加につながり、投資家にも楽観的なムードが広がり、株価は徐々に上昇していきました。

そして、急な資金流入があったため、FRBは徐々に資産購入額を減らしています。これをテーパリングと呼びます。

テーパリングにより、金融政策を正常化する狙いがありました。

金利も少しずつ上げることで、株式を売却して債券へ資金を移動させる傾向になってきました。

売却された株式についても、やはり高PERのハイテク株が売られる傾向になっているようです。

コロナショックでの米国での金利と株価の影響についてまとめます。

  • コロナショックにより株価大暴落
  • FRBが対策として、①「金利引き下げ」と②「量的緩和」を実施
  • 銀行に資金が流入しお金を貸しやすい状況になった
  • 企業は、金利が下がってお金が借りやすい状況になった
  • お金が銀行→企業→消費者へと、うまく循環するようになった
  • 経済が活発になり、短期間で株価が元の水準に戻った

 

金利には2種類の概念がある

金利には長期金利と短期金利の2種類があるとお伝えしました。

さらに金利には、2つの概念があります。

①実質金利
②名目金利

実質金利とは?

物価上昇を考慮した金利のこと

名目金利とは?

物価上昇を考慮していない一般的な金利のこと


よく銀行にお金を預けるとつく「預金金利○%」というように記載があります。これは名目金利となります。

実質金利と名目金利の関係を表した計算式が以下の通りです。

実質金利=名目金利ー期待インフレ率

名目金利➡10年債利回り
期待インフレ率➡予想物価上昇を用います。

米国の実質金利を見てみると、マイナスの状態が続いています。

これは、期待インフレ率が名目金利を上回っているということですね

つまり、「将来の物価上昇の見通しが、現在の金利を上回っているんだな」と判断できます。

ここで、金利と株価との関係についても考えてみましょう。

例えば、債券を持っていた場合に予想物価上昇率が名目金利を上回っていると損になります。

なぜなら、持っていてもインフレの影響で実質損になってしまうから(実質金利がマイナス)です。

こうなると、先ほどと同じように債券から株式へお金が流れていきます。

金利と株価の関係については、だいぶ理解が進んできましたか?

金利と株価を比較することで、今のお金の流れはどちらを向いているのかを把握することができます。

物価上昇率と金利の関係

米国の長期金利である10年国債は、4.3%まで上昇しています。

この金利を上昇させる要因としては、インフレ(物価上昇)の加速があります。

現在の米国のインフレ加速の要因は、相互関税による影響です。

米国内の輸入品に関税が課されたことで、消費者が製品を購入する価格は実質増えることになります。

つまり物価上昇と同じ状態になっていると言えますね

現在の相互関税と株価の関係について詳しく記事にまとめているので、参考にご覧ください。
日経平均大暴落!トランプ大統領の相互関税の影響を徹底解説。次の暴落に備えよう。 | とむろぐ

しかも、トランプ大統領が相互関税を実施すると発表した数日後に、「90日間の猶予期間を設ける」との発表がありました。

要は、「関税かけて値上げするのを90日間だけ待ってあげるよ!」という意味ですね。

このため、値上げ前に商品を購入しようとして、消費が活発になるためインフレが起こります。

インフレ状態というのは、需要が供給を上回っているので、モノの価格もどんどん上がっていきます。

この物価上昇を抑えるために、金利を上げることで、物価上昇を抑える効果があります。

金融機関はお金の流出を防ぐために、金利を高く設定するという流れになっていくわけです。

金利上昇局面でも上がる銘柄とは?

結論から言うと、「景気敏感株」です。

景気敏感株とは、景気の変動によって業績が大きく変動する業種です。例えば、化学、鉄鋼、機械、化学などが挙げられます。

これらの業種と景気変動、金利とどのようにつながるのでしょうか?

景気が良くなれば、景気敏感株もそれに合わせて高くなっていきます。

つまり、景気が良くなっている傾向があるときには、金利も上昇している可能性が高いです。

金利を上げるのは、景気が過熱し物価上昇を抑えるためでしたよね。

そのため、金利上昇局面には、景気敏感株も上昇するのです。

また、日本の景気敏感株にはある特徴もあります。

①米国の長期金利に反応する
②輸出比率が高い

長年、日本は金利が変動していません。

そのため、景気敏感株は日本ではなく米国の長期金利に影響することが多いです。

また、日本の景気敏感株には輸出比率が高い企業が多いため、米国経済の状況にも左右されます

また、金利変動で影響を受ける業種で分かりやすいのが、銀行株です。

銀行のメインの収入源は、企業への融資などにつく金利です。

つまり、銀行が貸したお金にかかる金利が高ければ、銀行への収益も高くなります。

その結果、金利収入の増加により業績が向上して、銀行株の上昇へとつながります。 

 

まとめ

株価と金利の関係については、理解できたでしょうか?

以下に金利と株価の関係をまとめます。

金利と株価の関係
  • 金利と株価は一般的には逆に動く
  • 金利上昇で真っ先に売られるのは、ハイテク株
  • ハイテク株はPERが高いため、投資家にとってはリターンが目減り
  • 景気敏感株や銀行株は、金利上昇の恩恵を受ける
  • 米国の長期金利の代表は、10年債利回り
  • 米国の長期金利も、日本の株価に大きく影響する


このように、金利は株価予測の1つの指標になります。

つまり、株価と金利の関係を理解することで、株価予測を強化できるのです。

株価予測を行う際に、小手先の戦法や目先のニュース、噂に飛びつく人が一定数います。

しかし、経済の基礎をしっかりと頭に入れて理解することで、正しい情報と誤った情報を峻別できます。

・悲観的なニュースが出たけど、原理的に株価への影響は少なそうだな
・金利の状況から見て、まだ売り時ではないな

このように、株価予測ができようになると、株の売買タイミングも図ることができます。

株式取引で一番難しいのが、このタイミングなんですよね

そのため何度も言いますが、基礎や原理をしっかりと理解してください!

理解せずに何となくで投資を行うと、大きく損を出す危険性もあります。

私の記事では「分かりやすさ」を意識していますので、ぜひ他の記事も参考にして投資を行ってみてください。

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