一般的に、投資初心者の方が「何を参考に銘柄の選択や、株式の売買タイミングをつかめばいいの?」と最初の一歩で迷ってしまい、なかなか株式投資できないケースは非常に多いです。
私は、現在で投資歴6年になります。投資指標をしっかり活用することで、銘柄選択や投資タイミングの精度を上げて利益を得るに至っています。しかし過去投資を始めたばかりのときに銘柄選択や投資タイミングを誤って損を出したことも多々あります。
そこでこの記事では、投資初心者の方向けに、投資指標の意味と活用方法を、できるだけわかりやすく解説しています。
この記事を読めば、数多くある投資指標の中何を参考にして、どう活用すればいいかが網羅できます。
私自身が過去6年間の間に、自身でインプットしたり実際に活用してみて非常に参考になった指標を12個に絞りました。
これからさらに投資によって利益を得る精を高めたい投資初心者の方は最後まで読んでください。
目次
投資の基本指標3選
①配当利回り
配当とは、「企業が生み出した利益の一部」です。
ある企業の株式を保有すると、決めれらた期日(配当支払い日)に配当金が支払われます。
なぜ、配当金を受け取ることができるの?
それは、「ある企業の株式を購入する=その企業へ投資をしている」ということになるからです。
会社へ投資するとはつまり、その企業の株主になれるというわけですね。株主になってくれたお礼として、企業の利益の一部を配当金として還元していることになります。
ここまでで配当について理解できたところで、「配当利回り」について解説しましょう。
配当利回りとは、株価に対してどれくらいの割合の配当金を受け取れるのかを示す数値のことです。
計算方法は以下のようになっています。
配当利回り(%)=年間配当金額÷1株当たりの購入株価×100
例えば、ソフトバンクを仮に1株2,000円。1株当たりの配当金額を85円とします。
計算式は85÷2,000×100=4.25%
このようになります。
ここで注意が必要なのが、「配当金」ではなく「配当利回り」に注目してください。
配当金を目的にして銘柄を選ぶときに、ただ配当金額が高いものだけに注目すると、長期的に損をする可能性があります。
例えば、1株当たりの配当金が85円のA株と、100円のB株を比較すると、B株の方が良さそうに見えます。
しかし、仮にA株が1株2,000円。B株が1株3,000円とします。先ほどの計算式から配当利回りを計算してみましょう。
A株 85÷2,000×100=4.25%
B株 100÷3,000円×=3.33%
結果から、A株の方が配当利回りが高いです。つまり株価が高すぎると、配当金額が高かったとしても、配当利回りは低くなります。
ここから2つのことが言えます。
1つは、B株はA株よりも、利益の一部を少なめに株主へ還元していることが言えます。もう1つは、株価が本来の価値よりも高く見積もられている可能性があります。
長期的に株式を保有して配当金を受け取りたいなら、A株のような株主還元を重視していて、適正な株価を維持しているところに投資したいですよね。
配当利回りは、「会社の利益から出る配当比率」と覚えておきましょう。また、「配当金額」ではなく「配当利回り」に注目してください。
②EPS
EPSとは、「1株当たりの利益」です。「Earnings Per Share」を略してEPSです。
Earningsは「収益」、Perは「あたり、ごとに」、Shareは「株式」を指します。
計算式は以下のようになっています。
EPS(1株当たりの利益)=当期純利益÷発行済み株式数
このEPSをかみ砕いていうと、「1株にたいしてどれだけ利益を稼いでいるのか」を示す指標です。
もっと分かりやすく解説しますね。
会社が株式を発行するのは、私たち投資家から資金を得るためです。その投資してもらった資金を事業に使用して、さらに収益を上げようを考えているわけですね。
そして、実際に投資したお金を利用して生み出された最終的な利益を「当期純利益」と呼びます。
つまりEPSとは、投資してもらったお金がどのくらい利益につながったのかが分かる指標と言えます。
なので、計算式も「当期純利益(最終的な利益)÷発行済み株式数(投資した株式数)」になるわけです。
このEPSを見ることで何が分かるのかというと、投資した会社の業績の良し悪しが確認できます。
EPSが高ければ、自分が持っている株式に対する利益が増えているとわかりますし、逆にEPSが低ければ、利益が下がっていると判断できます。
なので、このEPSという指標は、会社の業績につながる指標なのでとても重要になります。
まず銘柄選択の際は、まずEPSを確認しましょう!
③PER
PERとは、「株価収益率」です。「Price Per Ratio」を略してPERです。
Priceは「価格」、Perは「あたり、ごとに」、Ratioは「比率」を指します。
計算式は以下のようになっています。
PER(株価収益率)=株価÷1株当たりの当期純利益
株価収益率とは、「株価が利益の何倍になっているか」を指します。
そもそも株価とは、どのように決まっているのでしょうか?
株価は「株式の買い手と売り手の価格が一致した金額」反映されます。
そして、どのようにその一致した金額で成立するのかというと、2つの原則のもと成立します。
少し横道にそれますが、投資の基本であり、土台である株式市場についての仕組みなので覚えておきましょう!
株式売買の買い手と売り手の金額が一致する原則は以下の2つです。
①価格優先の原則
②時間優先の原則
買い注文については値段の高い注文ほど優先され、売り注文については値段の安い注文ほど優先されるという原則。
売買を受け付けた時間が早いほど優先されるという原則。
この2つの原則のもと、株価が決定します。
つまり、株価とは「実際の価値」ではなく「投資家がこの値段で売買したい」といった見積もり価格です。
なので、株式市場では日々株価が変動していますよね。
例えば会社の業績が良いというニュースが発表されれば、それだけその会社の株式の価値は高いと投資家に判断されて株価が上げるわけです。
ここで、PER(株価収益率)の話に戻ります。
1株当たりの当期純利益とは、前項のEPSのことです。
つまり、先ほど説明した株価をEPSで割ることで、株価が1株当たりの利益の何倍になっているかが分かります。
このPERを利用して分かることは、株価の割高・割安度です。
株価が利益に対して割高になっているとしたら、利益と関係なしに投資家が高額で株式を売買していると予想できます。
例えば、ポケモンカード。カードの小売価格は税込み180円です。通常5枚入りなので、1枚当たりの価格は36円になります。
しかし、最近ポケモンカードの人気が急激に上がり、カード自体の価格が高騰しています。カードの種類によっては、数十万円するものもあります。
これは、まさしくその値段で買いたい人と売りたい人の一致したたため、その値段で売買されています。
つまり、PERが高いとその株価は割高であると判断できます。
逆に、PERが低いと割安になります。実際の利益に対して、株価が安く見積もられていると考えることができます。
なぜ株価が安いというふうに見積もられているのか?
例えば、まだその会社の知名度が低くて投資されていないなどが考えられます。
しかし、実際に利益をしっかり出しているのに、株価が低い場合は将来知名度が上がるにつれて株価が上がると予想できます。
そのため、PERが低い割安な銘柄は、お買い得である可能性が高いと言えます。
このPERも銘柄を選ぶ際には、優先的に必ずチェックしておきましょう!
会社の経営状況を知るための指標4選
④自己資本比率
自己資本比率とは、総資本のうち自己資本の割合を示す数値です。
計算式は以下のようになっています。
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100
自己資本比率を見て何が分かるかというと、会社の安全性が分かります!
なぜこの数値を見ることで会社の安全性が分かるのでしょうか?
まずは自己資本の意味を理解しておきましょう。
そもそも会社における自己資本とは、会社設立時に株主から集められたお金のことです。また、自己資本には返済義務はありません。
この自己資本が多ければ、より投資家から期待されていたり、また新しい事業を行うための運転資金が潤沢にあることを意味します。
そしてもう一つ、他人資本があります。
他人資本とは、銀行などから借り入れていて返済する必要のあるお金(負債)のことです。
この自己資本と他人資本を合わせて、総資本と呼びます。
つまり、自己資本比率とは「総資本のうち返済義務がなく自由に使えるお金はどのくらいあるのか?という指標になります。
返済義務がない自己資本が多ければ、自己資本比率は高くなりますので、この数値が高ければ高いほど安全というわけです。
自己資本比率は、一般的には30%~40%が望ましい状態になります。逆に、自己資本比率が20%下回る会社は注意が必要です。
また、業種によって自己資本比率の適正水準は異なりますので、会社を比較する際には、同一業種の中で比較することをお勧めします。
以下は、令和5年度分の中小企業実態基本調査による業種別の自己資本比率です。参考にしてみてください。
参照元:自己資本比率とは?計算式や目安、分析方法をわかりやすく解説 | [ファンダナビ]Funda Navi
⑤売上高営業利益率
売上高営業利益率とは、売上高に占める営業利益の割合になります。
つまり、企業が本業で稼ぐ収益性が分かる指標になります。
計算式は以下のようになっています。
売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高✕100
まずは営業利益のイメージは以下のようになっています。
参照元:【実践】利益率の出し方とは?利益率から商品価格を設定する (suzuki-tax.net)
なぜ営業利益を対象にするのか?
営業利益とは、「営業利益=売上高ー売上原価ー販売費及び一般管理費」によって導き出されます。
要は、売上から販売した商品の原価だけでなく、その商品を認知してもらうための広告費やそれにかかった人件費を差し引いたものになります。
つまり、営業利益を見れば「本業でどのくらい稼いでいるのか」が分かります。
本業とは、会社の事業の中心になります。その事業で利益がしっかり出ていなければ、会社の経営が危うくなります。
なので、売上に対する営業利益を対象にして、売上高営業利益率を出しているのです。
さて、この売上高営業利益率の一般的な数値なのですが、業種によって変わってきます。
業種によってなぜ変わるの?
当然ですが、業種によって営業利益の基準数値は異なるからです。
業種によっては原価が高いところもあれば低いところもあります。また販売費及び一般管理費も業種によってバラバラです。
なので、業種別で一般的な売上高営業利益率の平均値を以下に参照します。ぜひ参考にしてみてください。
参照元:政府統計の総合窓口(e-Stat)中小企業実態調査「令和4年速報(令和3年度決算実績)」
⑥PBR
PBRとは、「株価純資産倍率」です。「Price Book-value Ratio」を略してPBRです。
Priceは「価格」、Book-valueは「簿価」、Ratioは「比率」を指します
株価がBPS(1株当たり純資産)に対して何倍まで買われているかを示したものです。
※BPS(1株当たり純資産)は次の項目で解説しています。
先ほど解説したPER(株価収益率)と並び、株価が割安か割高かを判断する重要な指標な1つです。
PERと異なる点は、「株価と比較する対象」です。
PERは「1株当たりの当期純利益」と比較して、株価が割安か割高か判断していました。しかし、PBRは「1株あたり純資産」と比較します。
純資産と比較する理由としては、会社の全体的な価値から株価が適正であるかを判断するためです。
株価が適正かどうかを判断するってどういうこと?
分かりやすくご説明しますね。
PERは会社の収益性(当期純利益)を評価対象とし、PBRは会社の価値(純資産)を評価対象としています。
会社の価値って、何でわかるの?
それが「純資産」なんです!
純資産は、企業が所有している総額(総資産)から負債を引くことで、割り出せます。これが、会社の実質的な価値になります。
当期純利益と純資産って同じようなものじゃない?
確かに言葉のイメージは似たようなものに思えてしまいますね。
図でご説明すると、以下のようなイメージです。
参照元:https://suzuki-tax.net/shacho-kyokasho/balance-sheet-profit-and-loss-statement
つまり、損益計算書の「当期純利益」が貸借対照表の「純資産」となるのです。
どちらも会社の状態を把握するための記録のようなものですね。
先ほどの「当期純利益と純資産って同じようなものじゃない?」という疑問の答えとしては、
損益計算書の会社の最終的な儲け(=当期純利益)は、会社の純資産として貸借対照表の「純資産の部」に加算される
このようにイメージしてもらえらばOKです。
したがってPBRとは、PERとは違う目線で株価を比較しますよという指標になっています。
PBRの活用方法
PBRの活用方法について、一般的にPBRが「1倍未満」の場合は株価が割安と判断できます。
PBRが1倍ってどういうこと?
PBRが1倍ということは、株価と純資産が等しくなります。
例えば、株式を購入した会社が倒産したとします。その場合、会社から株主へ保有している株式分のお金を返済しなければいけません。返済するお金は、もちろん純資産から払い出されます。
つまり、株価と純資産が等しければ、「会社が倒産したとしても保有している株式分の保証はありますよ」という水準になります。
これがPBRが1倍の状態です。
つまり、この1倍を下回っている場合の状態は、株価に対して純資産が多いということになります。
したがって、株価が割安だと判断できます。
しかし、ここで注意したいのは、「必ずしも1倍未満だから会社は安全!」「1倍を大きく超えているからやばい!」と判断しないことです。
会社があまり期待されずに株価が低迷していて、純資産に対して株価が極端に低くなっている場合もあります。そうなると、いくらPBR1倍未満といっても、今後会社がどうなるか分からない可能性も出てきます。
逆に、PBR10倍以上と割高な場合もあります。
例えば、会社によっては店舗や工場などを拡大することで資本金も増えて、純資産が大きくなります。
それとは異なりIT企業などは、店舗などを増やしたりする必要がなく資本金も少ないので、純資産が少ない場合があります。
しかし、今後の成長性が見込まれて株価が高くなっている場合は、PBRも10倍以上となることも珍しくありません。なので、会社の経営状況は悪くないけど、PBRが極端に高いという可能性もあります。
じゃあPBRを確認しても、投資判断できないじゃん...
そのために、他の指標も確認するのです!例えば先ほどのPERを活用します!
似たような指標がいくつかあるのは、比較対象を増やすことで「本当にこの会社の健全性は大丈夫か?」としっかり吟味するためです。
なので、PBRもあくまで一つの目安として活用して、他の指標も確認したうえで投資判断を行いましょう!
⑦BPS
BPSとは、1株当たりの純資産のことです。Book-value Per Shareの略語で総資産から負債を引いたものになります。
計算式は以下のようになっています。
BPS(1株当たり純資産)=純資産÷発行済み株式数
先ほどのPBRでも触れましたが、BPSは企業の安定性を見る指標の1つになります。
安定性って、企業のどの部分を確認すればわかるの?
それが、「純資産」です。
PBR解説でも言いましたが、純資産は「企業が所有している総額(総資産)から負債を引くことで、割り出せます」。これが、会社の実質的な価値になるのでしたよね。
つまり、BPSはPBRと密接に関係してきます。
BPSは「1株当たりの解散価値」とも呼ばれています。
つまり、もし投資した企業が倒産した場合、株式を売却して現金が株主に戻ってくる1株あたりの金額の目安がBPSとなります。
PBRは、株価がBPSに対して何倍まで買われているかを示す指標でしたよね。
したがって、PBRが1倍未満の場合、仮にその企業が倒産しても戻ってくる可能性のある金額の方が大きいことになりますので、「安全性が高い」と判断できるわけです。
なので、BPSはPBRを成す一部ということになります。
そして発行済み株式数は、文字通り会社が発行している株式の総数です。
純資産をこの総数で割ることで、1株当たりどのくらいの純資産の価値があるのかが分かるわけです。
つまりBPSが高ければ価値も高く、BPSが低ければ価値も低いと判断できます。
BPSを確認する際の注意点としては、時間軸で見ることです。
毎年BPSが伸びている会社は、株式に対しての純資産も堅実に伸びていっているとので、非常に安定性があると判断できます。
しかし、年によって急にマイナスになったり、毎年BPSの起伏が激しかったりする場合は、おそらく何か原因があるので確認しておきましょう。
企業の利益率を見極める指標3選
⑧ROE
ROEとは、自己資本利益率のことです。Return On Equityの略語になります。Returnは「返済」、Equityは「株式」を指します。
計算式は以下のようになっています。
ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
自己資本利益率を一言でいうと、株主が出資した資金に対する収益性を示す指標のことです。
つまり、会社へ投資する投資家(株主)の資金が、「その会社でうまく事業に活用されて利益が出ているのか?」を判断する指標です。
そして、その指標の数字を出すのに利用されるのが、「純資産」と「当期純利益」です。
PBRでも説明したように、純資産と当期純利益の違いは、損益計算書の「会社の最終的な儲け(=当期純利益)」は、会社の純資産として貸借対照表の「純資産の部」に加算されるものでしたよね。
でも、株主が出資した資金がどのくらいかってどうやってわかるの?
それは、「自己資本」を確認すれば分かります。
自己資本とは、その名の通り会社(自己)の資本の1つで、株主からの出資も含む返済不要な資産のことです。
つまり、ROE=会社の最終的な利益(当期純利益)÷株主からの出資金(自己資本)をすることでわかります。
このROEから判断できることとしては、「自己資本を使って効率よく利益を生み出せているか?」です。
なので、このROEの数値が高いほど、効率よく利益を出せていると判断できます。逆にROEが低いと、自己資本がうまく活用されていないので、経営効率が悪いことを示します。
一般的に、ROEの目安として10%以上が良好な状態だと判断されます。
しかしあくまで目安ではあるので、同じ業種内でROEを比較することをお勧めします。
以下の業種ごとのROEの目安表を参考にしてください。
⑨ROA
ROAとは総資産利益率のことです。「Return On Assets」の略になります。
Returnは「返済」、Assetsは「財産」を意味します。
計算式は以下のようになっています。
ROA(総資産利益率)=利益÷総資産 × 100%
ROAは「財務分析で収益性を示す指標」になります。
分かりやすくいうと、会社が自社の資産に対して、どれだけ利益を上げられたかを示しています。
気づいた方もいると思いますが、前項のROEと似ていますよね。ROAとROEとの違いについても説明しておきましょう。
結論から言いますと、2つの違いは収益性を計算するための資金の範囲にあります。
先ほどのROEは、株主から預かった出資金や純資産などの自己資本に対して、どれだけ収益を上げられたか(うまく活用できたか)を示していました。
それに対しROAは、総資産に対してどれだけ収益を上げられたかを示しています。なので、ROAは会社全体の総資産を範囲に収益性を測っているんだなと思ってもらえればいいです。
ROAを見ることで、会社が投下した資産をいかに効率的に活用して利益が出ているのかが分かります。
なので、ROAが高ければ、総資産に対して高い利益が出ているとわかります。逆にROAが低ければうまくうまく利益が出ていないことが分かります。
しかし注意点として、ROAを比較する際に会社の規模・設立年数を把握しておく必要があります。
なぜ会社の規模と設立年数なの?
例えば、同じ業種内の会社でもベンチャー企業においては、銀行からの借り入れなどの資金調達により総資産が増える傾向にあります。
「資産=負債+純資産」であることからも、借金も総資産に含まれてくるわけです。そうなるとROAは低くなります。しかし、ベンチャー企業は勢いもあるので、収益性が高い場合もあります。
なので、単にROAだけを見て「ROAが低いから、この企業は自分の資産に対して利益がうまく出せていないんだな」と誤った判断をしてしまう可能性もあります。
このような誤った判断をしないためにも、「会社の事業内容やどのくらいの設立年数なのか?」を確認する必要があります。また、その他指標も確認したうえで、銘柄比較をしていくことをおすすめします。
⑩ROIC
ROICとは、投下資本利益率のことです。Return On Invested Capitalの略になります。
Returnが「返済」、Investmentが「投資」、Capitalが「資本」を意味します。
計算式は以下のようになっています。
ROIC=税引後営業利益÷投下資本(投下資本 = 有利子負債+株主資本)
ROICを分かりやすくいうと、「企業と債務者(銀行など)から調達したお金に対して、どれだけ効率的に利益を上げることができたのか」を示す指標になります。
まずはこの投下資本についてご説明します。
投下資本とは、特定の事業に投下された資本のことです。
その投下資本の具体的な中身が、「有利子負債」と「株主資本」です。
有利子負債とは、金融機関(銀行など)からの借り入れ金を指します。株主資本は、株主からの出資金のことです。
税引後営業利益とは、営業利益から法人税などの税金を引いたものになります。
営業利益とは、商品を販売するのにかかった原価や人件費などを差し引いた利益でしたよね。ここからさらに税金を引くことで、本業で得た正確な利益が、税引後営業利益を見ればわかるというわけです。
まとめると、ROICとは投下した資本からどれだけの利益が出たのかを示す指標になります。
ROICについても、前項のROEとROAと似ている部分がありますね。
では、ROICは他の指標とどうやって使い分ければいいの?
実はROICは、ROEとROA両方のデメリットを解消した指標になるのです。
まずROEとは、自己資本利益率のことでしたよね。自己資本に対して、どれだけ利益が出たのかを示す指標です。自己資本とは株主からの出資金のことなので、ROEは株主視点の利益率が分かる指標と言えますね。
しかし実は、このROEの数字は分母の自己資本を変化させることで、数字も変えられてしまうという弱点があります。
「数字を変える?」とは具体的に、株主からの出資金なので、株主がより多くの出資金を出すことで自己資本は増えます。つまりROEの分母が増えることにつながります。
なのでROEは意図的に数字を変化させることが可能だということになります。こうなると、指標の正確性が崩れてしまいます。ここが唯一の弱点になります。
ROAについては、総資産利益率を表しています。総資本に対して、どれだけの利益が出たのかを測る指標でしたよね。
ROAの弱点は、取引先に対する交渉力が反映されないことです。この交渉力とは、取引先との支払い相談のことです。
例えば取引先の会社に対して後で支払わなければいけないお金(買掛金と呼びます。)がある場合、その支払日を先延ばしにしたり、保留したりと交渉できます。
そして、この買掛金は貸借対照表の負債に記帳されます。しかし、買掛金支払のタイミングが変わることで、負債を含む総資産の数字も変わってきてしまいますよね。
そうなると、分母に総資産をもつROAの数字も変わってきてしまいます。
つまりROAの弱点は、総資産という幅広い範囲を対象としているため、負債などのタイミングの変化によって数字が変わってしまうことです。
これは、先ほどのROEと同じくROAも正確性が崩れる場合があります。
じゃあROEもROAも参考にする指標としては使えないじゃん...
そこでROICです!
ROICは、このROEとROAの弱点を解消できます。
ROICの分母は投下資本(有利子負債+株主資本)でしたよね。まずはROEの弱点である「株主資本の変化で、指標の正確性が失われてしまうこと」ですが、ROICの分母は株主資本に加えて有利子負債も対象としているため、株主資本だけが変化しても分母に大きく影響は出ません。
そして、ROAの「事業負債の変化で、指標の正確性が失われてしまうこと」については、ROICは事業負債を含めず有利子負債のみを含めているので、その影響を受けません。
まとめると、以下のようになっています。
参照元:doda HPより
ただROICのデメリットとして、概念が少し難しいので導入が難しい場合もあります。
そのため、ROICだけを確認するのではなく、ROEとROAも一緒に確認したうえで、会社の状態を精査しておきましょう。
投資家の心理状況を把握する指標2選
⑪VIX指数
VIX指数とは、「恐怖指数」と言い換えられます。Volatility Index(ボラティリティー インデックス)の略になります。Volatilityとは「変動性」、Indexは「指数」を意味します。
VIX指数を簡単に言うと、この指数の数値が高いほど投資家が市場に対して、恐怖や不安を抱いていることを示します。
つまり、株式市場で暴落が起きている時に、その市場の温度感を知ることができるというわけです。
投資市場の温度感が低いときに、「投資をがんがんしていこう!」とはなりませんよね。そういった場合に役立つ指標になります。
参照元:TradingView – VIX指数
このVIX指数は、普段は10~20付近を推移しています。
しかし、2020年3月のコロナショック時には80.56。2008年10月のリーマンショック時にはなんと96.4まで上がっています!
つまり、このような株式市場で不安をあおるような出来事が起きた場合は、VIX指数の数値が高くなります。
VIX指数の目安としては、20を超えると不安が高まっていると判断できます。
しかし、逆に言うとVIX指数が高まり株式市場の温度感が低い状態のときは、その会社の価値が割り引いて見られていると捉えることができます。
リーマンショックやコロナショックといった暴落により、株式市場全体がその流れに巻き込まれているので、会社個別の価値が適正に判断されていないと言えます。
したがってその場合は、投資チャンスの可能性があると考えています。
要はスーパーマーケットでいう、バーゲンセールが起きているような状態ですね。より安い価格の時に購入することにより、その後暴落の波が過ぎた後に、徐々にその会社の株価が戻ってくる傾向があります。
まとめると、VIX指数で株式市場全体の温度感を把握することで、投資のタイミングを図ることができます!
⑫Fear&Greed Index
Fear&Greed Indexとは、アメリカのテレビ局であるCNNが提供する株式市場の市場心理を反映した指標です。Fearは「恐怖」、Greedは「強欲」、Indexは「指標」になります。
このFear&Greed Indexも、前項のVIX指数と同じである基準の数値によって、株式市場の温度感が分かります。数値基準と売買判断基準としては、以下のようになっています。
25:Extreme fear(極度の恐怖)→買い
25~45:Fear(恐怖)→やや買い
45~55:Neutural(中立)→買いでも売りでもない
55~75:Greed(強欲)→やや売り
75~100:Extreme greed(極度の強欲)→売り
なので1つの目安として、Extreme fear(極度の恐怖)を指している時が買いのチャンスととらえることができます。
Fear&Greed Indexの活用方法としては、2つあります。
①投資家心理を読むことができる
②株の購入タイミングを判断できる
前項のVIX指数とほとんど同じような活用方法ですね。ではVIX指数とはどの点が異なるのでしょうか?
まずは、数値の表示方式ですね。
Fear&Greed Indexは以下のようなバロメーターで表示されます。
参照元:恐怖と貪欲指数の説明:それをどのように使用するか (finmasters.com)
赤字の「EXTREME FEAR」とは極度の恐怖を示しており、10前後まで下がると、市場が急落の恐れを抱いている状態といえます。
Fear&Greed IndexはVIX指数と併用することで、より株式市場の温度感を把握することができます。
VIX指数もFear&Greed Indexも、どちらも別の定義に基づいて数値が算出されています。2つの指標を組み合わせる理由としては、株価は投資家の心理に大きく影響するため、その心理を完全に理解することは不可能だからです。
しかし、他の指標と組み合わせることで、株式市場の状態をより把握するための精度を上げることができます。
株式市場の温度感では、このVIX指数とFear&Greed Indexを組み合わせることで、より威力を発揮します。
特に、経験も浅い投資初心者の方が、何をもっていつが株式の売買タイミングなのか判断することは、とても難しいですよね。
そうなったときに、これらの指標を参考にすることである程度のタイミングをつかむことができます!
ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は押さえるべき指標として、厳選して12の指標について解説しました。投資に関する指標は数多くあり、全ての指標をくまなくチェックすることはプロの投資家でも難しいです。投資初心者の方ならなおさらです。
今回ご紹介した指標は、私が証券会社に時代に特にチェックしていて、実用性も高かったことから、ぜひ押さえておいてほしいと思いました。
また、指標の数値だけ確認するだけでも良いのですが、その指標の意味は何なのか?なぜこの指標を確認する必要があるのか?とより深く知っておくことの方が大事だと思っています。
最終的に投資判断を下すのは自分ですし、それにより損得を被るのも自分です。最終的な責任がすべて自分にあるのが投資です。
もし損を出してしまったときに、なぜ失敗したのか投資判断を振り返ることも、とても重要です。その際に、どの指標を確認して自分はどう感じて投資判断を下したのかを振り返らないと、また同じ失敗をしてしまいます。
なので、特に投資を始めたばかりの時に意識づけてほしいことが、指標の意味とその指標が会社や投資判断の何を参考にしているのかに疑問を持つようにしてください。
今後、日本だけでなく世界情勢も大きく変化していくことが予想されます。そのような不規則な時代だからこそ、何が起きても動じないような投資判断を身に付けていくことは重宝されるでしょう。
本ブログでは、小難しい投資用語の解説や、初心者の方の投資不安を取り除けるような内容を掲載しています。ぜひ他の記事も参考にしていただければと思います。
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