円安になると、日本株は上昇しやすいと言われます。
主な理由は、海外で稼ぐ日本企業などにとって円安が業績の追い風となり、将来の利益が増えるという期待が株価のプラス材料になりやすいからです。

ただし、「円安=必ず株高」ではありません。
海外から原材料や商品を輸入している企業にとっては、円安によって仕入れコストが増える場合があります。
また、円安が企業業績にプラスに働いても、金利や米国株、景気、企業決算など別の材料によって株価が下がることもあります。
元証券マンとして初心者の方に特に知ってほしいのは、

「円安だから株を買う」「円高だから株を売る」と単純に考えないことです。
この記事では、次の内容を投資初心者にも分かるように解説します。
- なぜ円安になると株高になりやすいのか
- 円安でも株安になるのはなぜか
- 円高になると日本株はどうなるのか
- 円安・円高の影響を受けやすい企業の特徴
- 為替を企業分析にどう活用すればよいのか
為替ニュースを見たときに、

この企業にはプラスなのか、マイナスなのか?
を自分で考えられるようになることを目指しましょう。
円安になるとなぜ株高になりやすい?まず仕組みを解説
円安で株高になりやすい理由を理解するには、

まず円安が企業の売上や利益へどのような影響を与えるのかを考えると分かりやすくなります。
特に海外で多くの売上や利益を得ている企業では、円安が業績の追い風になることがあります。
企業業績の改善が期待されれば、その企業の株式を買いたい投資家が増え、株価の上昇材料になる可能性があります。

ただし、すべての企業が円安で得をするわけではありません。
まずは基本的な仕組みから見ていきましょう。
円安になると海外で稼いだ利益の円換算額が増えやすい
為替換算の仕組みを分かりやすくするため、外貨ベースの利益が100ドルで変わらないと仮定して考えてみます。
為替レートが1ドル=100円なら、円換算すると、
です。
一方、1ドル=150円まで円安になれば、
になります。

海外で得た利益は同じ100ドルでも、円へ換算した金額は5,000円増えました。
このため、海外事業から多くの利益を得ている日本企業では、円安になると円換算した売上や利益が押し上げられることがあります。
特に現在の日本企業は海外で生産・販売するケースも多いため、

円安だから輸出数量が増える!
だけで考えるのではなく、

「海外で稼いだ利益を円換算すると増えやすい」という視点も重要です。
ただし、先ほどの100ドルの例は、あくまで為替換算の仕組みを単純化したものです。
実際の企業利益は、次のような要因にも左右されます。
- 現地で発生する人件費や経費
- 原材料の仕入れ価格
- 輸入コスト
- 生産拠点
- 為替ヘッジ

したがって、「円安になれば海外売上の多い企業の利益が必ず増える」と考えないようにしましょう。
業績改善への期待が株価上昇の材料になる
円安と株高の関係は、次のように考えると分かりやすくなります。
- 円安になる
↓ - 海外で稼ぐ企業などの業績に追い風となる
↓ - 将来の利益が増えるという期待が高まる
↓ - その企業の株を買いたい投資家が増える
↓ - 株価上昇の材料になる
日本株全体でも、海外事業の割合が大きい企業の業績改善が意識されると、株価指数の上昇材料になることがあります。

ただし、「業績にプラス=株価が必ず上がる」ではありません。
例えば、市場参加者がすでに円安による業績改善を予想しており、その期待が株価へ十分に織り込まれていれば、さらに円安になっても株価が上昇しない場合があります。
株式市場では現在の業績だけではなく、

これから業績がどう変化すると予想されているかも重要です。
円安=株高が必ず成立するわけではない
ここまで読むと、

それなら円安になったら日本株を買えばいいのでは?
と思うかもしれません。

しかし、円安=株高は絶対的な法則ではありません。
為替は株価を動かす重要な材料の一つですが、株価は為替だけで決まらないためです。
つまり、円安と株高が連動しやすい時期はあっても、

為替だけを見れば、日本株の値動きが分かるわけではないということです。
株価は為替以外の材料でも動く
日本株の価格には、為替以外にもさまざまな材料が影響します。
- 企業の業績
- 日本や米国の金利
- 米国株の値動き
- 国内外の景気
- 半導体市場
- 原油や資源価格
- 地政学リスク
- 投資家心理

日本株は日本国内だけで完結している市場ではありません。
米国株が大きく下落すれば、日本企業に円安メリットがあったとしても、日本株全体が売られるケースがあります。
SBI証券の分析でも、米ドル/円だけではなく米国株指数などを加えると、日経平均の値動きを説明するモデルの説明力が高まっています。
そのため、

今日は円安だから日本株が上がるはず!
と一つの材料だけで判断しないことが重要です。
円安なのに株安になることもある
円安が進んでいるのに日経平均が下落するケースもあります。
例えば、円安による業績改善期待よりも、米国株の下落や企業業績への不安など、

ほかのマイナス材料のほうが強い場合です。
SBI証券はその背景の一つとして、値がさの半導体関連株が日経平均へ大きな影響を与える、いわゆる「疑似半導体指数化」を挙げています。

つまり近年の日本株では、為替だけでなく半導体株や米国株など、別の材料が大きな影響を与える局面もあるということです。
さらに、円安メリットがすでに株価へ織り込まれているケースも考えられます。
市場参加者の多くが

今後さらに円安になり、この企業の利益は増えそうだ
と予想して株式を買っていれば、実際に円安になった時点では新たな買い材料にならない可能性があります。
そのため、
と覚えておきましょう。
円高になると日本株はどうなる?
円安について理解すると、

では円高になったら日本株は下がるの?
という疑問も出てくるでしょう。

円高になると、海外で稼ぐ企業には業績の逆風となるケースがあります。
一方で、海外から原材料や商品を仕入れている企業にとっては、円高がプラスに働くこともあります。

したがって、円高=日本株すべてに悪影響ではありません。
円高は海外で稼ぐ企業の逆風になりやすい
先ほどと同じように、外貨ベースの利益が100ドルで変わらないと仮定して考えてみましょう。
1ドル=150円なら、
です。
しかし、1ドル=100円まで円高になると、
になります。

海外で稼いだ利益が同じでも、円換算した金額は減ります。
そのため、海外事業から多くの利益を得ている企業では、円高が業績の逆風となることがあります。

ただし、円高になったからといって株価が必ず下落するわけではありません。
円高によるマイナス以上に、次のようなプラス材料があれば、株価が上昇することもあります。
- 本業の売上が伸びている
- 新商品が好調
- 利益率が改善している
- 株価が割安と判断されている
円高が業績の追い風になる企業もある
円高で恩恵を受けやすいのが、

海外から商品や原材料などを購入している企業です。
例えば、海外から100ドル分の商品を仕入れる場合を考えてみます。
1ドル=150円なら仕入れには1万5,000円必要ですが、1ドル=100円なら1万円で済みます。
円高によって円換算した仕入れ価格が下がるため、次のようなものを海外から購入している企業では、コスト削減につながる可能性があります。
- 原材料
- 商品
- 燃料

そのため、円安=良い、円高=悪いと日本企業全体を一括りにしないことが大切です。
円安・円高の影響は企業によって違う
為替について考えるときに最も注意したいのが、企業によって影響が大きく違うことです。
また日本銀行も、円安にはグローバル企業の収益などを押し上げる面がある一方、輸入物価上昇などを通じて中小企業や小規模事業者の収益にマイナスに作用する面があると説明しています。

つまり、「日本企業だから円安メリット」というわけではありません。
円安が業績の追い風になりやすい企業
一般的に円安が業績の追い風になりやすいのは、例えば次のような企業です。
- 海外売上が大きい
- 国内で生産して海外へ販売している
- 海外事業から得る利益が大きい
- 外貨建て売上が多い
自動車や機械、電機などの企業が「円安メリット株」と呼ばれることがありますが、

大切なのは業種名ではなく収益構造です。
例えば、海外で多くの商品を販売していても、海外での原材料費や人件費も大きければ、円安のプラス効果が小さくなる可能性があります。
円安が業績の逆風になりやすい企業
反対に、円安が業績の逆風になりやすいのは、次のような企業です。
- 原材料を海外から多く輸入する
- 海外から商品を仕入れて国内で販売する
- 外貨建ての仕入れコストが大きい
- コスト増を販売価格へ転嫁しにくい
例えば海外から原材料を100ドルで購入する場合、1ドル=100円なら1万円ですが、1ドル=150円になると1万5,000円必要になります。
販売価格をそのままにすれば、仕入れコストの増加によって利益率が悪化する可能性があります。
円安は輸出や海外事業を行う企業にはメリットとなる一方、輸入価格上昇によって企業や消費者の負担を増やす側面もあります。
同じ業種でも為替の影響が違う理由
元証券マンとして初心者の方に特に意識してほしいのは、

業種だけで円安メリット・円高メリットを判断しないことです。
例えば、同じ製造業でも、次のような違いがあります。
- A社:日本国内で製造して海外へ輸出している
- B社:海外工場で製造し、その国で販売している
- C社:海外へ販売しているものの、原材料も海外から大量に仕入れている
このような違いがあれば、同じ円安でも利益への影響は変わります。
そこで企業を見るときは、次の順番で考えると分かりやすくなります。
- どこで作るか
↓ - どこで売るか
↓ - どの通貨で売上を得るか
↓ - どの通貨でコストを支払うか

自動車だから円安メリット
食品だから円安デメリット
と丸暗記するより、企業の収益構造を見るほうが実際の企業分析には役立ちます。
元証券マンが解説|円安・円高を企業分析に活用する3つのポイント
ここまで円安・円高と日本株の関係を見てきました。
では、自分が保有している株や購入を検討している企業について、

円安になったらこの会社はどうなる?
と考えるには何を見ればよいのでしょうか。
元証券マンとして金融情報を初心者向けに考えるなら、

まずは難しい分析をする必要はありません。
次の3つから確認すると、為替の影響を整理しやすくなります。
①海外でどれくらい稼いでいるか確認する
まず確認したいのが、企業の海外事業です。
決算資料などで、次の情報を確認します。
- 海外売上高
- 海外売上高比率
- 海外事業の利益
海外で稼ぐ割合が大きければ、円安によって円換算した売上や利益が増える可能性があります。

ただし、海外売上比率が高い=必ず円安メリットではありません。
海外でどの程度コストが発生しているのかも合わせて見る必要があります。
②海外からの仕入れや原材料コストを確認する
次に見るのがコストです。
初心者のうちは、

海外売上が大きいから円安で儲かる!
と売上側だけを見てしまいがちです。

しかし、企業の利益は売上だけで決まるものではありません。
- 仕入れ費用や原材料費
- 人件費
- 販売管理費
など、さまざまなコストにも左右されます。
海外で大きく稼いでいても、次のようなものを海外から大量に仕入れていれば、円安によるコスト増が利益を押し下げる可能性があります。
- 原材料
- 部品
- 商品
- 燃料
企業を見る際には、「海外でどれくらい売っているかだけ」ではなく、

海外へどれくらい支払っているかも確認しましょう。
③公表されていれば想定為替レートを確認する
企業によっては、決算資料などで想定為替レートを公表しています。
例えば、「1ドル=140円を想定」として業績予想を立てている企業があるとします。

実際の為替が1ドル=150円になれば、会社の想定より円安です。
その企業が円安メリットを受けやすい収益構造なら、為替が業績の上振れ材料になる可能性があります。
反対に1ドル=130円まで円高になれば、想定より円高となり、業績への逆風になる可能性があります。

ただし、すべての企業が想定為替レートを分かりやすく公表しているわけではありません。
また、想定為替レートだけで業績を判断することもできません。
そのため、
元証券マンとして初心者の方におすすめしたい考え方は、

為替だけで株の売買を決めないことです。
円安・円高は企業を見る材料の一つとして利用し、次のような要素も合わせて判断することが大切です。
- 売上や利益の成長
- 財務状況
- 将来の成長性
- 株価水準
- 配当などの株主還元
円安と株高に関するよくある質問

Q1. 円安になると必ず株価は上がりますか?

いいえ。
円安は海外で稼ぐ企業などの業績にプラスとなり、株価上昇の材料になることがありますが、株価は為替だけでは決まりません。
企業業績、金利、米国株、景気、投資家心理など多くの要因が影響するため、円安でも株価が下落することがあります。

Q2. 円高になると日本株は必ず下がりますか?

必ずではありません。
海外で稼ぐ企業には円高が逆風となる場合がありますが、海外から原材料や商品を仕入れている企業では、円高によって仕入れコストが下がることがあります。
そのため、円高が業績の追い風になる企業もあります。

Q3. 円安に強い業種はどこですか?

自動車、機械、電機など、海外売上の大きい企業が多い業種は円安時に注目されることがあります。
ただし、業種だけで判断するのはおすすめできません。
同じ業種でも、海外売上、海外生産、輸入コストなどが異なるためです。
「どこで作り、どこで売り、どの通貨で売上と費用が発生するのか」を企業ごとに確認しましょう。

Q4. 円安なのに日経平均が下がるのはなぜですか?

日経平均は為替だけで動いているわけではないためです。
米国株、金利、企業決算、半導体株、景気など、別のマイナス材料が円安によるプラス材料を上回れば、日経平均が下落することがあります。
近年は、ドル円だけで日経平均を説明しにくい局面も確認されています。

Q5. 株を買うときドル円は毎日チェックしたほうがいいですか?

必ず毎日確認しなければならないわけではありません。
ただし、海外売上や外貨建てコストが大きく、為替による業績への影響が大きい企業を保有・分析する場合は、ドル円の動きを確認する価値があります。
大切なのは、ドル円だけで売買を決めないことです。
為替と合わせて企業業績や株価水準なども確認しましょう。
まとめ|円安=株高と丸暗記せず企業への影響を考えよう
円安になると、海外で稼ぐ日本企業などでは円換算した売上や利益が増えやすくなります。
そのため、業績改善への期待が高まり、日本株の上昇材料になることがあります。

ただし、円安=必ず株高ではありません。
この記事のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 円安は海外で稼ぐ企業の業績に追い風になることがある
- 円安によって輸入コストが増え、業績の逆風になる企業もある
- 円高では海外で稼ぐ企業に逆風となる一方、輸入企業には追い風になる場合がある
- 企業業績へのプラス材料と株価上昇は同じではない
- 日本株は金利や米国株、企業業績など為替以外の材料でも動く
- 円安・円高の影響は企業ごとに異なる
- 「どこで稼ぎ、どこでコストを支払っているか」を見ることが重要
元証券マンとして初心者の方に伝えたいのは、

「円安だからこの株を買う」と一つの情報だけで投資判断をしないことです。
まず、次の3点から確認してみましょう。
- 海外でどれくらい稼いでいるのか
- 海外からの仕入れコストは大きいのか
- 想定為替レートは公表されているのか
為替ニュースの見え方が変わり、自分が保有している企業や購入候補企業への影響も考えやすくなります。
そして、円安・円高と日本株の関係を理解したうえで、

これから実際に日本株投資を始めてみたい!
と考えている方は、

まず自分に合った証券会社を選ぶところから始めましょう。
証券会社がまだ決まっていない方は、以下の記事で初心者向けの証券会社を比較しています。
すでに楽天証券とSBI証券まで候補を絞っている方は、以下の記事を参考にしてください。
手数料やサービスの違いを確認したうえで、自分の投資スタイルに合った証券会社を選ぶことが大切です。























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